こんにちは! さいたま野仏ミュージアムへようこそ! 来館、ありがとうございます。

さいたま野仏ミュージアムの館長/主任学芸員の自由堂ノックです。

さいたま野仏ミュージアムは、埼玉県を中心に野仏の写真を収集・保存・展示を目的としたオンライン上の博物館です。

ここではさいたま野仏ミュージアム設立の経緯と目的について書かせていただきます。

さいたま野仏ミュージアムができるまで

あれは2014年の夏、北陸のとある町に学芸員の試験を受けに行った帰りに青春18きっぷで北陸を旅していた時でした。

せっかく大学で学芸員の資格を取ったけど、学芸員という仕事は空きがないためなかなか資格を活かすことができない。いったいどうすればいいのだろう。そんなことを考えていた時、ふとひらめいたのです。

そうだ! 博物館を自分で作ればいいんだ!

もちろん、現実世界に博物館を作ろうとすると、広大な土地、莫大なお金、膨大な時間がかかります。

でも、ネット上なら、僕でも博物館を作れるはず!

そう思い立ったはいいいものの、肝心の「何の博物館にするのか」が思い浮かばず、そのまま1年が過ぎ去りました。あ、その時受けた試験は、筆記は通ったけど、面接で落ちました(笑)。

1年後、僕はトルコのエフェソス遺跡というところにいました。

写真 426このエフェソス遺跡は東京ドーム何個分というより、東京ドームシティと同じくらい広い遺跡でした。

どうして、日本にはこれほど大きな都市の遺跡が残っていないんだろう?

そりゃそうさ。ヨーロッパの建物は石造りだけど、日本の建物は木で作られているからね。取り壊しやすいし、残らないさ。

待てよ? 日本にも、石でできたものがあるじゃないか。

町中に、道端に、ぽつんと置かれた野仏。これって、「路傍の遺跡」と言えるんじゃないだろうか。

35.大東の庚申塚①

これを研究すれば、その地域の町の成り立ち、歴史がわかるのかもしれない!

そうだ! 野仏をテーマにした博物館を作ろう!

そうして、1年ほどかけて埼玉県を中心に100近くの野仏のデータを集め、このたび、さいたま野仏ミュージアムとしてオープンしたのです。

さいたま野仏ミュージアムって博物館なの?

とはいえ、皆さんは今、このようなことを思っているのではないでしょうか。

「これって博物館なの? ただのWEBサイトじゃん」

では、博物館とはそもそも何なのでしょうか。

博物館とは資料を調査・研究・収集・保管・教育・展示する機能と目的を持つモノのことを言います。

そして、さいたま野仏ミュージアムでは埼玉県を中心に野仏を探し、写真を撮り記録を取るなど、調査を行っています。

さらに、調査した野仏をもとに、野仏についての研究を行っています。

問題は収集です。

88.中尾の庚申塔①.JPG

こんなの集められるか、バカヤロウ。

ただ、博物館法によると、実物だけでなく、「写真」も立派な資料として含まれています。

つまり、資料として価値のある写真を収集することも博物館の務めなのです。

そもそも、野仏の実物を収集するということは、重い、置く場所がない、お金がかかるというだけでなく、学術的にもアウトだという理由があります。

野仏は、「元々あった場所」にないと意味がないのです。

なぜなら、野仏を研究するということは、「なぜここに置かれているのか」を考える、ということだから。

例えば、上の写真の庚申塚。庚申塚は村の入り口に魔よけの意味で建てられることが多いです。

つまり、その場所に庚申塚があることにより「ここが村の入り口ですよ」ということを現代の僕たちにも教えているのです。

それを博物館に移したりなんかしたら、台無し!

また、これらの野仏の中には、今でも地元の肩の信仰の対象であるものもあります。

58.北浦和の庚申尊像2

このように、今でもお供え物が欠かさず置かれ、わざわざやってきては手を合わせて拝む人がいるのです。ぼくもそういう人を何人も見てきました。

野仏の実物を博物館に移してしまうということは、今現在も生きている習俗を壊してしまうことにもつながるのです。

なので、さいたま野仏ミュージアムでは実物ではなく「写真」の収集とその保存・展示にこだわっています。

そして、野仏に関する知識を提供することで教育機関として機能させ、

ゆくゆくは埼玉県教育委員会に登録し、

オンライン上にある「ホンモノ」の博物館を目指していきたいと思っています。

ですから、さいたま野仏ミュージアムは「博物館」なのです」。